『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を読んで
ベストセラーだった前作の「スタンフォードの自分を変える教室」を書いたケリー・マクゴニガルさんの最新刊です。前作が意志力についての考え方を根本的に変えていったのに対して、今回はストレス研究の最新事情について説明してくれています。
この本は、もちろん、今、仕事や人間関係のストレスで苦しんでいる人に読んでほしいと思います。
では、この本の内容を少しだけ書いておきましょう。
まず、著者が1998年に行われたストレス研究の結果について、驚愕するエピソードから、この本は始まります。
その研究とは、ストレスとは本当に人間に害を与えるものかといった視点から調査を行われたものでした。
調査結果から、ストレスを受けていても、ストレスを良いものだと信じている人にとっては、死亡リスクが低いという事実が判明しました。
著者は、この結果に驚愕するわけですが、この事実を受け入れて研究を始めていく過程が、この本で描かれています。
そして、著者は、ストレスが、人の心構え、つまり受け取り方によって影響が変わるという事実に気づきます。
では、なぜ、ストレスは体に悪いと言われるようになったのでしょうか?それについてもストレスの概念の発祥から、悪いと言われるようになった歴史的な背景を説明してくれています。
さて、今回印象に残ったのは、いくつかありますが、取り上げるとすると、次の3つになりました。
①最も苦しんだ人が、最も人を助けるという事実
②他人の幸せは大きく見える
③回復力の最大な源は、苦しみは自分だけが受けているわけではないという実感をすることと周囲の人への援助
これらの内容の詳細は、大変、面白かったのでぜひ読んでほしいと思います。
この本の中では、著者が過去経験した悲しい思い出も書いてあり、その経験が著者の人生とこの本にいい、かつ大きな影響を与えているように感じました。
翻訳書としては読みやすかったです。後半はものすごい勢いで読破していました。
この本を読んでよかったのは、トラブルを回避する人生は無理ですが、トラブルからのストレスにうまく立ち向かっていくことは可能だという事実を気づかせてくれたことでした。
また、トラブルから立ち直る過程で、より自分が成長できるという事実を知り、勇気をもらった感じがしました。ありがたい本だと思います。
著者のケリー・マクゴニガルさん、翻訳者の神崎朗子さん、装幀を担当された水戸部功さん、カバー印刷の歩プロセスの皆様、そして大和書房の皆様、素敵な本を出版していただきありがとうございました。