『加賀屋 笑顔で気働き』を読んで
株式会社加賀屋の女将さん、小田真弓さんが書いた本です。加賀屋といえば、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で35年連続一位を獲得したことで、ご存知の方も多いかも。
その加賀屋の女将さん、小田さんが今まで加賀屋の軌跡を語ってくれた本です。
この本は、ズバリ、今頑張っている女性起業家の方に読んでほしいと思います。
「能登はやさしさ土までも」という言葉で、この本は始まります。これは、能登の人たちの心のやさしさを表した言葉で、加賀屋はそれを実現するために日々努力しているそうです。
この本を読むときには、注意深く読んでほしいと思います。起業するにあたっての、起業家が何をしていくべきなのか?をこの本ではしっかり語られているからです。
先代の女将さんが、旅館をよくしていくために、どんな気持ちで取り組んできたか?あるいはお客をもてなすために、無理な要求にどう答えてきたかなど。
先代の女将さんのエピソードだけでも、お客を虜にする知恵が披露されています。(旅館にストックされていないお酒を用意するエピソードなど)
現在の女将である小田さんが、先代の女将からどういう教えを受けてきたかの過程も注意深く読み解いて行って欲しいと思います。そこにビギナーとしての起業家がどう成長していくかのヒントがあります。
そして、小田さん自身が、客室係に対して、どういう気持ちで接していき、かつ客室係のためにどんな施策を打って行ったかなどは、従業員確保がままならない企業にとっては参考になるはずです。例えば、旅館のそばに保育園付きの母子寮を作る、料理を運ぶための機械の導入など。
これらの施策を行うことは、女将である小田さんにとって、風当たりがいいことばかりでなかったと思います。それでも実施したことが今の繁栄につながっていることに。
客室係へのクレーム(一言多い)の話では、自分でもよくある話なので、これは参考になりました。人あたりをよくするために、この点は直していきたいと思います。
前半にある、加賀屋の転機となった設備投資の話は経営者としては判断することが非常に難しかったと思います。それでも勇気を持ってリスクを取ったことが今の繁栄につながっているので、この時の関係者の思いが実現できてよかったと思いました。
小田さんは人をよく見てきているので、単に優秀かどうかだけで人を判断しないという姿勢が見えます。鈍くても長い時間の視点で見れば、人を財産となると考えていることがわかり、今後、人を指導していく人にとっては極めて重要な視点を提供してくれたように思いました。この点で、小田さんの器の大きさを知ることになりました。
この本も、著者のレベルの方が読み手よりも上だと感じさせるものでした。もう少し器が大きければもっと学べるのにと痛感しています。
著者の小田真弓さん、印刷・製本担当の三松堂の皆様、ブック・デザインの竹内雄二さん、日本経済新聞出版社の皆様、ビジネスを行う上で非常に参考になる本を出版していただきありがとうございました。