nishiikatsumi’s diary

Long Live Reading Books

『「洞察力」があらゆる問題を解決する』を読んで

 1989年に「現場主義的意思決定(Naturalistic Decision-Making : NDM)理論」を構築したことで、世界的な名声を博したゲイリー・クラインさんが書いた本です。

 有隣堂書店で目立っていたので、気になって手にとってみました。

「洞察力」があらゆる問題を解決する

「洞察力」があらゆる問題を解決する

 

  この本は、ズバリ洞察力を得たい人、問題解決する力を上げたいと思っている人に読んでほしいと思います。

 

 この本は、まず2人の警官が、高級車に乗っている男のある仕草を見て、彼が乗っている自動車が盗難車であり、彼が車を盗んだ犯罪者であることに気づくという話からスタートします。

 なぜ、犯罪者だと気がつくことができたのか?そこにたどり着くための思考パターンとは…

 

 本題に入る前に、著者のクラインさんは、まず古典的な思考パターンを教えてくれます。それは、ウォーレス氏のコンセプトで、「準備」、「発案」、「閃き」、「確証」というもので、発見への過程では、このフローを通るそうです。

 しかし、著者のクラインさんは、それに異を唱えます。一例をあげると「準備」があります。通常、アイデアを思いつく時の準備は意図的にできているかというとそうではない事実を出して、異論を唱えています。

 

 そして、著者独自の視点で、以下の流れでこの本を使って語ってくれます。

 1.何が「見えない問題を見抜く力」を触発させるのか

 2.何が原因で「見えない問題を見抜く力」が発揮されないのか

 3.「見えない問題を見抜く力」を絶えず発揮するための実践的な方法があるのか

 

 そして1.に関して、認識パターンを5種類に分類して解説してくれています。

 ①出来事のつながりから見抜く方法

 ②出来事の偶然の一致から見抜く方法

 ③好奇心から見抜く方法

 ④出来事の矛盾から見抜く方法

 ⑤絶望的な状況における、やけっぱちな推測による方法

 

 上記の5種類に分類された項目の実例の説明が面白く、本の内容の把握そっちのけで夢中になってしまいました。たくさんの事例が紹介されているので、面白く読むことができます。

 私の場合、上記5種類のパターンのうち、①、②、④を、特に④を使っているように思います。ある事例でOKなのに、なぜ、この事例だけおかしいのかという視点で事例の矛盾している内容を突き止めています。

 後半の3.に関しては、「見えない問題を見抜く力」を発揮するためには、心を開き、他人の言うことに耳を傾ける重要性が語られていました。これは、人の話をうまく聞けない自分には、堪えました。

 先入観なしで、人の話を聞けるようにしたいと思います。

 

 各事例がわかりやすく展開されていて、なぜ見抜けたのか?そうでないのかが、すんなりわかるので、楽しめると思います。

 2.の「見えない問題を見抜く力」を発揮できない理由については、個人、組織と語られていますが、とにかく完璧を目指しすぎないことが重要であることが語られていて、これは正直意外に感じました。

 

 著者のゲイリー・クラインさん、翻訳者の奈良潤さん、装丁担当の萩原弦一郎さん、戸部みゆきさん、本文イラスト担当の川野郁代さん、本文デザイン&DTP担当の新藤昇さん、印刷・製本担当の萩原印刷株式会社の皆様、フォレスト出版株式会社の皆様、洞察力を高めるのに役立つ本を出版していただきありがとうございました。