nishiikatsumi’s diary

Long Live Reading Books

『「やさしさ」という技術』を読んで

 世界トップレベルの医大として知られるカロリンスカ医科大学の分子腫瘍学教授、ガン専門医として知られるステファン・アイルホルンさんが書いた本です。

 ステファンさんは、スウェーデンでは非常に有名な方で、1999年にカロリンスカ医大の「学生が選ぶ最優秀教授」に認定されたそうです。

 この本は第3作目にあたり、人口900万人のスウェーデン国内で30万部の大ヒットとなった本です。

「やさしさ」という技術――賢い利己主義者になるための7講

「やさしさ」という技術――賢い利己主義者になるための7講

 

  この本は、ズバリ、やさしさを持つことに価値が見出せない人に読んでほしいと思います。

 

 やさしさというと、皆さんはどう感じるでしょうか?いろいろ思うところがあると思います。著者はやさしさが生きていく上で重要だと語ります。

 この本では、著者が考えてきたやさしさの講義が7講、書かれています。

 まず、この7講の前に書かれている著者のエピソードが、かなり考えさえられました。それは、リンパ腺がんを患った老婦人の治療の話です。治療中になくなれた老婦人の親族から訴えられるかもしれないという危機が生じるのですが、実際に訴えられることもなかった。その陰にあった老婦人の思いを知ることになります。この話から7講が展開していきます。

 

 以下に、7講のタイトルを書いておきます。

 ①やさしさと倫理

 ②偽りのやさしさ

 ③やさしさ・勇気・利己主義

 ④あなたが「よい人間」になれない理由

 ⑤やさしさは得か?

 ⑥「成功」とは何か?

 ⑦なぜ、やさしくなると成功するのか?

 

 個人的に印象に残ったのは、④あなたが「よい人間」になれない理由でした。数項目にわたって、なぜかやさしくなれないケースを紹介しています。実は、これは誰にでも当てはまるケースなので、注意が必要です。

 この本で注目するべきは、著者が本で学んだことを紹介している部分ではなく、著者が医師として体験した項目でしょう。がん告知など、本来ならやりたくないことをあえて、実施した経験などが語られています。

 これをなぜ、行ったかを考えると著者が非常に心優しい人格者であることがわかるのです。

 特に、手術代を払えそうもない外国人の病院受け入れの対応の際に、著者が新参者だったために、適切な意見を出せなかったことへの反省は、私には印象に残りました。

 私の場合、おそらく印象に残らず忘れてしまうだろうなと思いつつ。

 

 やさしさを表すことで、巡り巡って自分に返ってくるということに関する研究結果の紹介などを通して、やさしさを表すことの意味を説明してくれています。

 これらを読んだ時に、もっと優しくなろうと思えるようになると思います。

 

 やさしさを示すことは大きな見返りを得ることになるという著者の見解は正しいと思います。ただ、それは短期的なものではなく、長期的なものだろうと私は感じていいます。

 この本の意図するところをつかめた感じはしません。再度で出会うべき本かもしれません。でも今、出会えてよかった本だと思います。

 

 著者のステファン・アイルホルンさん、翻訳者の池上明子さん、装幀担当の水戸部功さん、印刷・製本担当の中央精版印刷株式会社の皆様、株式会社 飛鳥新社の皆様、やさしさの大切さを教えてくれる本を出版していただきありがとうございました。