『忘れる力 思考への知の条件』を読んで
「思考の整理学」の著者である外山滋比古さんが書いた最新刊です。
実は、以前、「思考の整理学」を購入していたのですが、結局読まずに捨ててしまった経緯があり、この本を読めるかどうか気になっていました。
ここ2、3週間積ん読状態になっていましたが、なんとか読めてよかったです。
この本は次の3名の方に読んでほしいと思います。
- 記憶力が弱いことが気になって仕方がない方
- 勉強してもなかなか実力がつかないと感じている方
- 仕事をしていく実力を身に付けたい方
この本は、思考を深めるために必要なことは、ズバリ忘れることだと語っています。
えっと思われる方も多いかもしれませんが、物事を記憶するためには、まず頭の中を空っぽにしておかないといけないということが前提になっています。
つまり、まず最初に頭のメモリを確保するために、溜まっていた知識を忘れることが重要であると、この本は語ります。
普通、考えると、忘れるというのは致命的な問題のように感じます。
私も友達と話していて、以前読んだ本の説明をする際に、忘れていたりすると結構格好が悪いものだと感じます。
ですが、外山さんはそれが人間にとって必要なことだと、この本で語ります。
忘却をすることで得た知識が練磨されていく過程があり、それを行うことで深い思考が得られるのだと感じました。
この本の中では、外山さん自身が大学教授だった時のエピソードがいくつか紹介されていて、それがうまくまとまっているので、楽しめると思います。
この本では、忘れるという行為の中で、時間を経て忘れることと、別のことをしたり休みを取ったりして意識を変えることなどに焦点を当てています。
いつものように印象に残った内容をあげると
①寺田寅彦さんの小説の編集過程が非常に興味深い。
依頼されてすぐに仕上げ、その後で一旦寝かせるというのは、おもしろいと思いました。後で違和感が出てきたら直す姿勢が興味深かったです。
②ことわざを小馬鹿にしない
ことわざには、それまで時代の知恵が含まれているとのこと。現在の教育は、それをあまりに軽く見すぎていると。
③仕事の進め方
まず片付ける仕事をリストアップして、一番困難な順番に仕事を片付けていくことが重要とのこと。外山さんも知らず知らずのうちにこのやり方をしているとのこと。
こう書いても、内容の一部を軽く触れただけなので、印象に残らないと思います。気になった方は、ぜひ、書店で手にとってみてください。
昔、物事を忘れると、上司に怒られていましたが、ネガティブに考える必要はなく、脳が情報の整理を行っているんだなと考えたらよかったんですね。
この本にはもっと早く出会いたかったです。
著者の外山滋比古さん、装丁担当の石間淳さん、装画担当のヤギワタルさん、印刷・製本担当の中央製版印刷株式会社の皆様、株式会社さくら舎の皆様、思考を深めるのに役立つ本を出版していただきありがとうございました。