nishiikatsumi’s diary

Long Live Reading Books

『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』を読んで

 クリントン政権下でゴア副大統領の首席スピーチライターなどを務めたダニエル・ピンクさんが書いた本です。そして翻訳者にびっくり、あの高名な大前研一さんです。

 この本では、人間のやる気、つまりモチベーションと言われるものが、どうやったら出てくるのかについての深い議論を提供してくれています。

 このやる気は、一般にはなかなか出てこないように思えますが、その原因についても語られていて興味深く読ませていただきました。

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)
 

 この本は、ズバリ、社員にやる気がないと語る経営者の方に読んでほしいと思います。

 

 この本では、最初に1949年に実施されたハリー・F・ハーロウさんたちによるアカゲザルを実験して得た不思議な結果を紹介しています。

 その実験では、アカゲザルにある仕掛けを与えて、それが解けるかどうか調べた実験でした。その時に餌を褒美として与えた時とそうでない時で、結果が異なるという事実でした。

 驚くことなかれ、結果は、餌を与えた方が悪かったのです。これでハーロウさんたちは、報酬以外に心の中から生じる動機付けが、この結果に大きな影響を与えるということに気づきました。

 しかし、当時は、そんな事実が受け入れられることもなく埋もれてしまいます。

 その事実は、カーネギーメロン大学で心理学の研究を行っていたエドワード・デジさんによって、再び注目をされることになります。

 この本は、主にデシさんの研究結果をもとに進んでいきます。

 先ほどはアカゲザルの話でしたが、これが人間に当てはまるのか?が気になるところだと思います。

 この本では、人間にも当てはまると主張します。そして、報酬で釣ることが必ずしも良い影響を与えないという事実を紹介しています。

 もっとも、報酬がある程度なければ、この議論に成り立たないわけで、報酬が納得出来るレベルであれば、さらに報酬で釣ることが成果を上げる助けにはならないそうです。

 逆に追加の報酬が出なければ、社員が動こうとしなくなるので、報酬よりも役立っているというメッセージを明確に伝えることが重要だと、この本は語ります。

 

 では、アメリカの先端企業はどうしているか?ですが、報酬で釣るよりも、業務の自由度を与えることで、モチベーションを上げていく試みを実践しています。それらの事例が幾つか紹介されていて、どれも興味深いのです。

 自由度とは何かと言うと、業務目標や勤務時間の設定などなどを労働者自身で選択させることです。

 実際に、これを実行していくと、離職率は激減し、収益も驚くほど改善されるということが、データとして明らかになっているとのことです。

 これには、驚かされました。ただ、私の場合も、上から押し付けられた業務目標をやるよりも、人助けになる目標やこれをやったらいいという内なる心から出た目標に基づいて働いている時が非常に成果があげられているというのは実感しています。

 私自身がなんとなく感じていることが、この本によって明らかになったので、非常に興味深かったです。

 第3部には、やる気を出していくためには、何をすればいいかについてのツールキットが紹介されていて、今日からやる気を出していくことを試みることができます。

 

 この本を読んで、頭をよぎったのは、こうして私が読書ブログを書く習慣でした。ブログの投稿完了が報酬となっているために、短い本や優しい本ばかりを読む傾向が続いていました。もう少し、読者として、本を読む姿勢について考え直していく必要があるなと思いました。

 

 著者のダニエル・ピンクさん、翻訳者の大前研一さん、翻訳協力の庭田よう子さん、本文レイアウト担当の山中央さん、株式会社講談社の皆様、やる気を起こすことがどういうことかを教えてくれる本を出版していただきありがとうございました。